はれとけ日誌

ぜんごしょの東京暮らし

唇裂顎裂口蓋裂 ④ 乳首選び

おっぱい戦争の続編です。哺乳瓶の乳首を探して彷徨った話。

搾乳完母の四苦八苦については別にまとめます。実物の画像など、データを整理して出てきたら載せていこうかな。

病院などではっきり説明された覚えはないのですが誤解を恐れずに言うなら、裂があるとき哺乳には原則として咬合式ニプルを使うしかありません。顎裂をカバーする口蓋床を装着しても、口腔内を陰圧にできないことは変わらないです。

何を使って哺乳できるかは、一人ひとり異なり、正解はありません。裂の有無に関わらず、赤ちゃんと手探りしていくしかありません。でも、赤ちゃんが言わんとすることは判るので、心配しないで大丈夫です。この乳首はイヤだとか、しぶしぶOKとか不思議と判り、時にはおっぱい飲みをさぼってるな〜というのも分かるものでした。もし余力があれば、さぼってる赤ちゃんには少しでも顎を使わせることが、予後を順調にするように感じました。気合いを入れて飲むことが、食べること、話すことへ繋がっていきました。

乳首の取付方法別
  • 専用瓶に直接被せるタイプ
  • 乳首をキャップで固定するタイプ
  • 広口瓶に合うタイプ
1番目は一部の産院で採用されているようです。
2番目が一般的な哺乳瓶&乳首です。乳首の種類も瓶の種類も多種多様です。キャップのしめ具合で空気孔(減ったミルクの分だけ空気を取り入れる隙間)を調整し、出量を変えるものもあります。
3番目は母乳に近い飲み口を追求したタイプ。裂を塞ぐようにフィットしやすいという理由で、裂児向けと謳われているものもあります。


カットの型
メーカーごと呼び方が違うので、勝手に分類しました。

丸穴は、・ とか ∴ とか:という穴が乳首の先に空いていて、吸うと出るタイプです。吸わなくてもダラダラ出るものもあります。
吸うと出るタイプは、口腔内を陰圧にできない裂児は飲めません。
吸わなくても出るタイプは、哺乳に体力を使わないので、低体重や合併症など、機能や体力が弱い場合に向いています。
ただし、噛む訓練にならないので、状況がゆるすなら、少しでも噛んで出すタイプをおすすめします。

ラインカットは、乳首先端にー型の切込が入っているタイプ。噛むと隙間が開いて、ミルクが出てくる仕組みです。
ロスカットは、切込の形が+型、K型、Y型のもの。M型の変形タイプもあり。ラインカットと同じく噛んでミルクを出しますが、より切目が多いので、出やすいです。

弁の有無
乳首のデザインには、カットの他に、弁の有無という違いがあります。
弁が有るものは、唾液混じりのミルクが瓶へ戻っていきにくいです。一噛みごとに限られた量が出てくるため、飲むには噛み続ける必要があります。倒れた時や温め時の膨張で溢れにくく、口に含んだまま眠ってしまってもだらだら流れ続けない等のメリットがあるようです。


素材
  • 天然ゴム
  • 合成ゴム(イソプレンゴム)
  • シリコンゴム
天然ゴム・合成(イソプレン)ゴム
黄色っぽい色がついています。シリコンより柔らかく、へたりやすい。ややゴム臭がある。
シリコン製に比べ、ぺらっとした感じがしますよ。噛む力はあまり必要としません。低体重や合併症で哺乳に体力を使いたくない子向け。
早産気味で産まれがちで低体重の傾向がある裂児なので、新生児期の選択はこのゴム製になると思います。力がいらないからです。

産院で使ったのが、ピジョン KR乳首 直付タイプ
牛乳瓶のような専用瓶に被せて使います。少量ずつ搾乳を温めて与えるのにも良かったので、退院時に瓶をもらって帰宅し、通販でも追加購入しました。
乳首は医療機関向けの流通ですが、通販で入手できました。

市販されているイソプレンゴム製で普通の哺乳瓶に使えるのは、ピジョン Kタイプ
丸穴・で穴のサイズが変わるシリーズと、カットで切込がY型、M型のシリーズがありました。カットで切込が+型のピジョン 果汁用もイソプレンゴム製です。
ヌーク 口蓋裂用乳首は天然ゴム製です。

細口・広口
広口は母乳育児を意識した商品です。おっぱいに近いお椀形の大きな乳首。洗浄し易さもウリのようです。

広口タイプの製品例
  • ピジョン 母乳実感
  • テテオ 授乳のお手本★
  • ヌーク プレミアムチョイス★
  • ビーンスターク 赤ちゃん思い(広口)
  • チュチュベビー 広口タイプ
  • ピジョン 母乳相談室

結論を言うと、タローの口には合いませんでした。直接母乳に戻る可能性は殆ど無かったですし、口の奥の方へ乳首が届く方が飲めたのですが、広口タイプは吸い付きが浅くて難しかった。また、悩ましいことにどれも咬合式ではありません。噛む力で乗り切ろうという主旨に合わず、早々に見切りをつけました。なるべくおっぱいに近い方が良いのかなーと思っていただけに、「口腔内の発達を促す哺乳方法と母乳育児を推奨する哺乳器具の構造が異なる」ことに、暫くもんもんとしました。
★印はタローの頃は無かったため、実際に使用したことはありません。

細口タイプの製品例
  • ヌーク スタンダード(変形)★
  • ドクターベッタ★
  • ビーンスターク スタンダードタイプ
  • ビーンスターク 赤ちゃん思い(細口)
  • チュチュベビー スタンダードタイプ
  • テテオ スタンダードタイプ★
  • ピジョン スタンダードタイプ
ビーンスタークの赤ちゃん思いは、ニプルの先端が非対称な形状をしています。医療タイプと似ていて、口腔内の奥の方へ届くので期待したのですが、タローには合わず。ヌークスタンダードタイプも先端が長めで似た感じでしたが、瓶が特殊な形で使い回しがきかないからなぁと後回しにした結果、試さずにすぎました。
他、★印は使ってみませんでした。

裂児用の医療タイプ
  • ヌーク 口蓋裂用乳首
  • ピジョン Pタイプ
  • チュチュベビー メディカルタイプ
  • コンビテテオ ママの手
  • メデラ スペシャルニーズフィダー
医療用です。口蓋床を装着しない場合のファーストチョイスかと思います。合併症があったり、哺乳力がない人向けでもあります。哺乳瓶本体が柔らかく、押すとミルクを出してやることができるものもあります。
医療用でも哺乳瓶から哺乳できない場合は、針なしの注射器(ピストン)で流し込む、胃チューブで流し込む、スプーンやコップで飲ませる方法があります。

おまけ 搾乳器メーカーもの
  • カネソン
  • メデラ
各社の搾乳器用カップに直付けできる乳首があります。直接母乳ができず、搾乳を選択した場合に候補に挙がるでしょう。

まとめ タローの場合
タローは術後を除いて、咬合式の乳首で搾乳した母乳を飲みました。哺乳瓶を咥えられない術後数日間は注射器、コップ飲み。

可能なら、少しでも能動的な哺乳を援助すると良いと思います。自分で飲もうとすることは、生きようとする意欲だからです。タローは大雑把ではありますが鼻漏れしたって手掴みでごはんを食べてくれる子に育ちました。広い裂がある割には顎の発達が良く、顎矯正がいらないかもしれないと言われています。おっぱい頑張ったもんね、と密かに称賛しています。

個人的なおすすめとしては、直接母乳→咬合式の乳首で哺乳瓶→コップ飲み・吸咥式の乳首で哺乳瓶→注射器→胃チューブ

医療上の状況でチューブしか方法がない場合もあります。それでもOK!生きることが第一ですもん。

ただ、病院だと、管理が難しいとか、ちょっと試してすぐ無理だと判断されることはあります。他の子と比べて時間がかかるとか、苦しそうだとか。搾乳を与えることも、衛生管理ができないからと拒否されたりしました。ん〜なんだかな〜、そんなものかな〜…悶々と、心細くなることもありました。今もある。

破綻のない範囲でその子により望ましい授乳環境を用意してあげられると良いですよね。